全国ヤブ医者マップ
全国ヤブ医者マップをご存知でしょうか。
そんなもの存在するはずない? そう思われる方は上記のリンクをポチッと押してみてください。びっくりします。 (ブラクラではありません。ただし、医療関係者にとっては精神的ブラクラかもしれませんが。)
Yahooワイワイマップですが、約1ヶ月半前に作成されて以来、97,139ものアクセスを集め、はてぶでも、高い注目を浴びています。その内容はと言えば、92の病院に対し、「ヤブ」との書き込みがなされています。書き込みの内容は多様で、単に「ダメ」というものから、「セクハラをされた」「誤診された」「通院費公費負担制度の申請を通すために、躁うつ病と偽の診断をしています。 」など。
その書き込みの大半は個人的体験に基づいたもの、噂に基づいたものです。単なる勘違いと思われるものから、悪意に基づいていると思われるものまで多々あります。そもそも匿名ですから、ユーザーは書き込まれていることに対して責任を持つこともありません。これが自分の病院の正当な評価だと言われて誰が納得するでしょうか?
こうした匿名参加者による情報の集積はwikipediaと同じで参加者の性善説に期待したもので、各ユーザーの利害が対立し得る場合には有効ではありません。(wikipediaでも政治的または宗教的に微妙な問題は編集合戦が繰り返し起こっています。)このマップの場合、例えば、近くにあるライバル病院の悪口を書き込むことだって出来るわけです。
いずれにせよ、今では2ちゃんねるでさえIPアドレスをとっていて、実名を出して名誉毀損的発言は、実際のニュースに基づいたものでない限り自粛する傾向があるのに、こんなものがYahooに出てくるなんて驚きです。また、医師や病院に対する不信感が一部ではこれほど高まっていることに戦慄を覚えます。
このマップにもし晒されてしまったら何ができるのでしょうか。
このマップの作成者はコメントの中で「1.公共の利害に関する事実に係ること(公共性) 2.その目的が公益を図ることにある(公益性) 3.事実の真否を判断し、真実であることの証明がある(真実性) この3点に準じたものを投稿して下さい。」としています。これはWikipediaからの引用「名誉毀損の成立阻却要因」のようです。
では、この成立阻却要因が存在しないことを証明しない限りは、これらの書き込みに対し、名誉毀損であるとして病院は打つ手はないのでしょうか?
ネット上の書き込みによる名誉毀損では動物病院対2ちゃんねる事件が有名です。僕が調べた範囲ですが、それの第1審判決が出た際のインターネット協議会の法律問答集、またネット上の名誉毀損に関する判例と解釈などが参考になるかと思われます。
いずれにせよ泣き寝入りすることはありません。書き込みが名誉毀損であると信ずるならば、行動を起こすべきです。
ITmediaでどのように対処するべきかの記事が載っています。
「影響が小さければ静観する手もある」、としていますが、今回の場合すでに10万に迫るアクセスを集めており、かなりの影響力があるように思われます。そして、「影響が大きいと判断した場合は、メールを使って本人へ警告したり、プロバイダへ削除を要請するといった選択肢がある」としていますが、この場合には皆匿名で参加しているので、「分からない場合はサイト開設者にメールを送付することになる。」この時、注意点として、「送付したメールなどはネット上に公開される可能性が高い」としています。
削除要請をする際の書式はプロバイダ責任制限法関連の情報を扱うISP Lawのサイトから入手できます。この場合には、プロバイダーを相手に権利侵害情報の削除の申し立てを行うことになります。その場合の総務省の見解はこちらをどうぞ。
ぶっちゃけ、僕はこのマップを見てびっくりしてインターネット上の法律サイトを読みあさっただけなので、真剣に法的対応を考えている方はどうか弁護士に相談してください。
このマップを見た医療関係者の方は、知り合いの病院が載っていたらぜひ伝えてあげてください。自分が勤める病院が晒されていたら院長に伝えてあげてください。知り合いの医療関係者にもこのマップの存在を伝えてください。
このマップを見た医療関係者ではない方は、書き込みの全てを信じる前に、良識を動員してください。書き込みのほとんどは真実である保証は無い上に、もし事実だったとしても、たった一人の体験に基づいています。メディアリテラシーが試されています。
追記:翌朝マップをもう一度見てみたところ、スポット数(情報が書き込まれた病院の数)がもう104まで伸びていました。参加者数も一晩で30人以上増えています。産婦人科医師が逮捕されたことで注目を集めた福島県立大野病院も、微妙なケースでまだ裁判で係争中であるにも関わらず、その為にマップに加わりました。(詳しくは周産期医療の崩壊をくい止める会をどうぞ)ここに来て多くのブログに取り上げられて、一気に注目を浴びているようです。いずれ大きな問題になるでしょう。
追記:仕事から帰って覗いてみると、アクセス数が15万を超え、スポット数も112まで増えています。加速度的に増えているようです。
追記:どうしてこのマップに書き込みをする人たちの意見と医療従事者の意見はすれ違うのか?考えてみた続きのエントリーはこちらです。
追記:本文中では不正確な書き方になってしまいましたが、打つべき最初の手段は法的手段ではなく、ヤフーに対して「送信防止措置の明示的な請求」(消してくれ、とはっきり言う)を行うことからです。この部分に関しては弁護士は必要ありません。必要なのは上記ISP Lawサイトにある「名誉毀損・プライバシー関係書式」です。削除の申し立てがあると、ヤフーはまず情報削除の申し出があったこと を発信者に連絡しなければなりません。そして、7日以内に発信者から反論がなければ削除する、という手順になります。
今日の自己管理
規則正しい生活 × 運動 ×
英語 ○23 試験勉強 ○3
今日の一人言
バージニアで銃乱射事件があり、32名の方が亡くなられました。合掌。
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コメント
医者としてはネット上で医者の優劣の情報交換が行われるのは気に入らないかもしれませんが、利用者としては悪い病院には出来る限りかかりたくないものです。現在の日本のように、医療産業が法律で厚く保護されている状況では、制度の上にあぐらをかいた病院・診療所が非常に多いです。そういった現実があるからこそ、多くの人が腐敗した医者にはかかりたくないと考えるのは自然なことであって、そのための情報交換を批判するのは医者側の傲慢に思えます。
投稿: トモ | 2007年4月19日 (木) 00時41分
私は情報公開や交換そのものは批判していません。私が問題にしているのは、情報の質があまりにも低いこと、匿名IPをかさに悪意の垂れ流しとしか思えない書き込みが多いことです。そして、それにも関わらずこのマップがアクセス数を集めているようなので、病院としてそれに対処するべきだ、と考えました。
コメント欄を見ると、そうした情報を書き込むことが公益性に叶うと勘違いしている方が多いようですが、匿名で質の低い情報を書き込むことでかえって内容の信憑性が失われていることに気づくべきです。(それでもメディアリテラシーの低い方は信じるのかもしれませんが…)
当然ご存知だと思いますが、匿名でネットへ情報を書き込むことは、公益通報者保護法にも法的な保護に足る告発方法として位置づけられていません。
投稿: tanu | 2007年4月19日 (木) 10時47分
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投稿: MorrowNellie | 2012年2月 4日 (土) 05時18分